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in the flight
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コロンビアの朝は早い。
店内をすみずみまで磨き上げ、掃除をして、テーブルには中庭に咲いている花や草を摘んできては毎朝きちんと取り替える。
メニューは少ない代わりに全て店主であるテンゾウの手作りで、営業中や店を閉めた後に手間隙かけて仕込んでいる。
店はまるで大きな森のような木ノ葉公園に隣接していて、ぱっと見た感じではお店だと気付く人は少ない。

店の回りは、すっぽり木々に囲まれている上に、出している看板もとても控えめなものだった。
入り口に面している部分が全てガラス窓になっているので、なんとなく店内の様子は伺えるけれど、やっぱり入って来る客は少なかった。



 一     コロンビア

 


 いつものように開店の準備を終えて看板を外に出せば、休日らしく公園に向かう子供連れを見かけて目を細める。
 毎朝同じ事の繰り返しのようだけど、自然に囲まれていると些細な事がとても新鮮であったりする。今日なら昨日の雨のせいで湿気を含んだ土の匂いや木の幹の匂いがはっきりと感じ取れるし、雨で空気中の埃がきれいに洗い流されたかのように空は透き通っている。
 店先に植えている鉢植えの草花も、太陽を浴びてイキイキとしているように見えた。
 一人になって随分と経つけれど、寂しいと思った事は一度もない。むしろ一人になる前は気が付けなかった事が多い。
 だから、静かに丁寧に日々を過ごしていく事が今の僕にとって大切な事だと思っている。

 店内に戻り、ガラスを念入りに磨きはじめると、今日一番のお客さんが入って来た。
「いらっしゃいませ」
 いつも眠たそうな目をしながらフラリと入って来るこの人は、何を話すでもなく。きまって一番奥のテーブルに座って持って来た本を読む。
 磨いたばかりのピカピカのグラスに氷と水を注ぎ、テーブルに運んだ。
「おはようございます」
 いつものように僕がそう言えば、決まってポリと頭を掻いて小さくおはようございます。と呟くように答えて。
「あ〜・・・と、ホットコーヒーとパン」
「はい。かしこまりました」
 朝食を取ってから仕事に出かけるのか、いつも決まって同じものを頼む。
 モーニングはやっていないのだけど、野菜も食べたほうがいいと思っていつからかサラダを付けてあげるようになった。
 大きめのボールに山盛りのサラダ。
 自慢ではないけれどそんなに流行っている店ではないのに、田舎に引っ越しした祖父から週に二回、使い切れないほどの沢山の野菜が届けられるから、僕としてはちょうど良かった。
 最初に出した時は、頼んでないと驚かれた。でも、野菜も食べないと駄目ですよと言えば、暫し考え込んだ後ニッコリ笑って、じゃあいただきます。と答えてくれた。

 笑った顔を見たのは、その時だけだった。だけどそれが凄く印象的で、毎朝ほぼ欠かさず来てくれる事もあってか気にかけるようになった。
 それでなくても目立つ容姿。たまに男だと分かっていても見とれてしまう事がある位に整った顔立ちをしている。
 お客様をジロジロ見るのも失礼な話だし、なるべく見ないようにしようと気を付けていたのだが。

 ネルドリップで丁寧にコーヒーをいれていると、いつのまにか目の前に人が立っている事に気が付いて必要以上に驚いてしまった。
 その反動でポットの湯が反対側の手にかかってしまい、思わずネルを手放してしまったら見事に中身が飛び散って白いシャツが汚れてしまった。あっという間に茶色いシミが広がる。
「大丈夫?」
「すみません、大丈夫です。いれるのに集中しすぎてしまって気がつきませんでした・・・。あ、それで何かご用でしたか?」
 何も言わずにいきなり目の前に立っていたから驚きはしたけれど、お客さまに心配をかけてはいけないと思って何でもないような顔をして微笑んだら、そんな僕の様子を見て可笑しそうに笑った。
「先に着替えてきてください。シミになっちゃうよ」
「でも」
「店番なら俺がしておくから。大丈夫」
「・・・すみません。では、お言葉に甘えて」

 本来ならば断るべきだったんだろうけど、あんまりにも柔らかくて優しい口調で言われたものだからつい僕は頷いてしまったけど、やっぱりお客様に店番をさせるなんて。
 だから僕は急いで居住スペースになっている二階に上がり、コーヒーで濡れてしまった服を全部脱いですぐに洗濯機に入れた。勢いよく水が流れ出す音を聞きながら、タンスに畳んであった新しいシャツに腕を通した。
 あんなに驚いてしまうなんて、自分でもびっくりだった。多分、あまり見ないようにと気を遣い過ぎていたから驚いてしまったのだけど。僕はあの人がいるってだけで、何故だかいつも緊張してしまうんだよなぁ。

 すっかり着替えて一階に降りていけば、カウンターの中で僕がコーヒーをこぼしてぐちゃぐちゃにしてしまった台をきれいに拭いてくれている所だった。
「わ・・・置いてて下さい、すみません」
 慌てて中に入り台拭きを取り上げようとしたら、僕から取られないようにさっと手をかわした。
「ううん。ほら、目の前でこぼされて黙って待ってる訳にはいかないでしょ?俺が驚かせちゃったみたいだし」
「いやいや・・・でも」
 それでもやっぱりお客様にさせる事じゃない。
「んー・・・じゃ、サラダのお礼?ね。それならいいでしょ」
 そうやって、有無を言わせないような笑顔で言われてしまったら頷くことしかできなくて。
 結局、台は元通りにピカピカに磨きあげられた。

「・・・そういえば、何か用事があったのでは」
「いや、いつもサービスしてもらってるのにお礼をちゃんと言ってなかったから」
 そう言って彼はこちらを向いて、またにっこりと微笑んだ。
「いいんですよ。野菜はほとんど田舎から送られてくるものなので、使ってあげないと逆に無駄にしてしまうんです」
「それでいつもサラダが新鮮なんだ。店はずっと一人で?」
「ええ。一人のほうが気が楽ですから」
 話しながら、もう一度コーヒーをいれなおす。カウンターの中に人がいる事が新鮮だと思いつつも、何故だか違和感を感じないのはこの人だからなんだろうか。純粋に彼のことが知りたいと思った。
「良ければお名前を教えて頂けませんか?」
 僕がコーヒーをいれる様子をじっと見ていた彼は、そうだったと呟く。
「カカシ。今年で30歳になるんだよ。マスターは?俺より若いよね、多分」
「はい。僕は今年で27歳になります」
「四つ下なんだ・・・で、名前は教えてくれないの?」
「あ・・・すみません聞いておきながら。テンゾウっていいます。よかったら呼び捨てで呼んで下さい」
 そう言って、淹れたばかりのコーヒーをカップに注いで、先に用意してあったサラダとパンもトレイの上に全部乗せた。
「わかった。俺、この店が本当に好きでね。仕事場が公園の向こう側にあるんだけど・・・あ、仕事場って言っても自宅なんだけどね。だから毎朝公園の中を通って来てるんだけど、それがすごく気分転換になるっていうか」
「仕事って何をされているんですか?」
「花火を作ってるの」
「え。花火ですか・・・?」
「そうそう。といっても、家業を手伝ってるだけなんだけどね」
 ということは、花火師ってことなんだろうけど。花火師って僕のイメージでは、もっとがっちりとしていて体育会系で陽に焼けていてっていう。だから、全くそんなイメージじゃないから驚いた。
「花火師さんでしたか。じゃあ今、忙しいでしょう」
「んー、俺は花火のデザインとか、火薬を詰めたりする位だからそんなにね。打ち上げたりはしないよ、だって暑いもん。俺、体力あんまり無いからね。立ち会ったりはするけど」
「花火好きですよ。木ノ葉公園の花火大会は毎年二階の部屋から見てるんです・・・そっか。カカシさんが作った花火を見てたんですね、僕は。あ。用意ができたのでテーブルまで運びますね」
「あ、ごめん。長々と話し込んじゃった」
「こちらこそ。仕事に遅れちゃいますよね」
 そんなことを話しながら一緒にテーブルまで移動をする。背は僕より高いようだけど、姿勢が悪いせいで並んだらきっと僕のほうが高いように思えた。
 カカシさんが座ったところで、テーブルの上にパンとサラダ、コーヒーを並べた。
「じゃ、いただきます」
「はい」
 ニッコリと目尻を下げて微笑んだカカシさんに僕も微笑んでカウンターに戻った。
 見た目があんなだから、とっつきにくい人なのかと思っていたけど、こんなに気さくに会話してくれるのならもっと早くに話かけていれば良かったなんて後悔をした。
 もう少し話をしたかった所だけど、それじゃカカシさんが仕事に行けなくなってしまいそうだから仕込みの続きをする事にした。

 店も一人で切り盛りできるようになってきたからランチを始めようかと思って、カレーにを出す事にした。その玉葱をじっくり炒め始めながら、なんとなくカカシさんを見たらばっちり目が合ってしまった。
「仕込み?」
「ええ。ランチを始めようかと。カレーなんですが」
「あ。じゃあ俺、昼も毎日来るよ」
 コーヒーを口につけて、そう言った。
「いやいや、駄目ですって。栄養が偏りますし」
 それでなくても毎朝パン食っていうのは・・・と続けてしまいそうになったのを、寸での所で止めた。それを出してるのは僕なんだから。
「はは。じゃあ週に一回位にしておこうかな」
「そうですねぇ・・・それくらいなら」
「うん。だって、絶対においしいと思うんだよね。マスター・・・じゃなくて、テンゾウのカレー。このパンだって手作りでしょ?」
「はい。店で出すものは、なるべく全部自分で作ったものにしたくて」
焦げないように注意しながら少し離れた席にいるカカシさんと話をしていると、たまに来て下さるお客さまが入って来た。
「いらっしゃいませ」
「コーヒーを」
「かしこまりました」
 もう少し話をしたかったなぁとまた思ってカカシさんを見れば、にっこりと笑って会釈をしてくれた。僕も笑顔で返して、鍋の火を一旦止めた。
 店名にまでしてしまったコロンビアの豆を計量スプーンで二杯、ミルで挽けば珈琲豆のいい匂いがふんわりと広がる。
 ネルの袋に入れて湯を差せば、ふっくらと豆が膨らんでくる。沢山お湯が出ないように慎重に、だけど慎重になりすぎないように少しずつお湯を注いでいく。何度やっても気が抜けない。
 今日は疲れたなぁとか思いながら淹れてしまったら、理由は分からないけれど本当に美味しくなくなってしまう。
 コーヒーをカップに入れてテーブルまで運んだ所で、カカシさんが席を立った。
「ごちそうさまでした」
「ありがとうございます。今日は色々と迷惑をかけたので、お代は・・・」
 お代は頂きませんって言おうとする前に、カウンターの上にぴったりの代金を置いた。
「だから、それはいいって言ったでしょ?テンゾウと話せて楽しかったしね。じゃあまた明日」
「あっ・・・はい、お待ちしてます。ありがとうございました」
 閉まった扉をしばらく呆然と眺めてから溜め息を吐いた。それでもやっぱり頂く訳にはいかなかったなぁと。
 
 花火師さんだったのか。本当にそんな仕事をしているようには見えないけど、捩じり鉢巻とかするのだろうか。白い地下足袋も意外と似合うのかもしれない。さらさらの銀色の髪も、火薬の匂いがするのかな。


 一日の仕事を終えて、二階の部屋に上がった。
 もともと一軒家だったのを改装して一階だけを店にした。だから二階に自分用の台所と風呂とトイレがあるから、居住スペースとしては割と狭いかもしれない。
 だけど一人で住むにはこれぐらいがちょうど良くて、とても気に入っている。
 ずっと祖父が住んでいた家を、引っ越しを機に譲り受ける事になって。
 ほんとうは僕も一緒に田舎に連れて行きたかったみたいなんだけど、僕はこの街もこの家も好きだったからここに残った。

 カカシさんもずっとこの街で暮らしていたんだろうか。
 目の前の、森のような広い公園の中ですれ違った事とかあったのかもしれない。
 公園の向こう側って言ってたけど、早く歩いたって片道二十分はかかると思う。その道のりを毎朝、僕の店に来るために歩いて来てくれているって事が凄く嬉しいと思った。雨の日だって、雪の日だって、最初に来てくれた時から定休日以外はほとんど毎日。

 僕はそういえば、あまり公園の中には入らない。多分この店がもう公園の一部分みたいな感覚になっているから、わざわざ行く理由もあまりなくて。
 部屋の奥の窓が公園に面しているから、カーテンを開けば公園の中にいるみたいな感じだからかもしれない。

 カカシさんはどうやって僕の店を見つけてくれたんだろう。毎朝、時間をかけて僕の店に来てくれる位なのだから散歩の途中とかに見つけてくれたのかな。
 公園の向こう側といえば、そういえば大きな敷地の工場みたいな所があったような気がする。

 なんでだろう。今日は本当にカカシさんの事ばかり考えてしまう。
 僕は自分でも気付かないうちに、カカシさんの事がとても気になっていたんだろう。あの細くて繊細そうな指先で火薬を詰めているのかと想像した。




 翌朝、いつものように掃除をしてから庭先で花を摘む。
 カカシさんが座る席には白い小さな花を飾ってから、看板を出しに行く。
 今日もよく晴れて、すっかりもう夏。ここは木が沢山あるから涼しいけれど、駅前に行けば多分とても蒸し暑いんだろう。
 店内からは今日の分のパンが焼ける匂いが漂ってきている。
 昨日仕込んだカレーは今日から出す事に決めているから、ご飯も用意したりと仕込みが増えて忙しくしていると、店の扉が開いてカカシさんが今日も来てくれた。
「おはようございます」
 毎日当たり前のように来てくれているけれど、顔を見る度にホッとする。
「おはよう」
 カカシさんはそう言って、入り口で立ち止まった。どうかしたんだろうかと心配していたら、そのままいつもの席には座らずにカウンターの席にちょこんと座った。
「今日はここで。あっちだと、他の人が来たら話しにくいでしょ?」
 と、目の前でニッコリ笑われて僕は何故だか照れてしまって。
 僕も話がしたいから凄く嬉しいんだけど、昨日よりずっと緊張してしまった。
「はい。今日は外、暑かったでしょう」
「うん、すっごく暑いよ。でも、ここに来るまではずっと木陰だからね・・・あ、カレーの匂いがする」
 そう言ってカカシさんが身を乗り出してカウンターの中を覗き込んだ。
 上から三つ目まで開かれたシャツの隙間から素肌が見えて、何故なのかは分からないけれど僕はドキドキして顔が赤くなってしまった。
 すぐに返事が帰ってこない事を不思議に思ったカカシさんが、そのまま顔を上げる。
「僕、カレーには自信があるんです。でも人に食べて貰う機会もあんまりなくて、ちょっと心配なんですよね」
「じゃあ、ちょっと早めに来るよ。俺も早く食べたいし」
「今日また来てくださるんですか」
「もちろん」
 そう言ってカカシさんは嬉しそうに笑ったけど。午前中でもこんなに暑いのに、お昼時なんてもっと暑いはずだから来てもらうのが申し訳ないと思った。
「お昼はもっと暑いと思いますから、無理されないで下さいね」
「ありがとう」
 カカシさんはそれ以上何も言う事なくそう言って、僕がコーヒーを淹れるのを楽しそうにじっと見ている。
「今日はちょっと、いつもと表情が違う。何かいいことあったの」
「えっ?」
 いきなり変な事を言われたせいで、ゆっくり落としていた湯を一気に注いでしまいそうになって慌ててポットを置いた。
「何もないですよ。変な顔してますか」
「ううん、なんか嬉しそうな顔してるから」
 自分では全く気付いていなかったけど、そんな顔してるのかと思ったら恥ずかしくなってしまった。多分、僕がそんな顔をしてるのはカカシさんとこうやって話せるようになったからであって。
「カカシさんも嬉しそうな顔してますよ」
「えっ、俺?俺はテンゾウと話せるようになったのが嬉しくて」
 無理矢理に返事を返したのに、あっさりそんな事を言われてしまって余計に照れてしまった。
 だけど、別に話ができて嬉しいって思う事は照れるような事じゃないのに。どうしてこんなにドキドキしてしまうんだろう。
「多分僕も、同じだと思います。それに、なんかこうやって話しながら淹れていると一緒に淹れているみたいで楽しくて」
「本当?俺、見てるだけなのに」
「多分すごく美味しいと思います、これ。淹れている時の感情とかって、味にすごく出るんで」
 そう言って注ぎ終えて、ネルドリップも外した。
「そうなんだ。でも、いつも本当においしいけどね」
「そう言ってもらえると、すごく嬉しいです」
 カカシさんが微笑むから、僕も微笑み返す。この感覚はなんだろう、本当に。カカシさんが笑うだけで、心が温かい気持ちになる。
 温めていたカップに淹れたばかりのコーヒーを注いだ。カップに注ぐと淹れている時とはまた違う香りが漂う。
「おまたせしました」
 いつも通りパンとサラダとコーヒーを、カカシさんの前に並べた。
「ありがとう」
 カカシさんはコーヒーカップに口をつけ、ひとくち飲んでにっこりと笑った。その表情を見て、僕もホッとして笑う。
「おいしい。いつもより優しい味がする。なんかねぇ、いつもはもっとスッキリしてるんだけど・・・この味も好き」
 僕も少しだけ残ったコーヒーをカップに移して飲んでみると、確かにいつもより柔らかい味だった。
 本当に不思議だと思う。他のお客さんがカウンターに座って、こんな風に喋りながらコーヒーを淹れる事なんてしょっちゅうあるけれど、味が変わる事なんてないのに。やっぱりカカシさんは僕にとって特別なんだなと改めて思った。
「カカシさん、恋人いるんですか?」
「いないよ。俺ね、そういうの昔から苦手なんだ。人付き合いも悪いし、多分一人でいるのが好きなんだと思う」
 少し悲しそうな顔で笑う。そんなつもりはないのかもしれないけれど、僕にはそう見えた。
「そうでしたか・・・すみません、変な事を聞いてしまいました」
「いいよ、全然気にしてないから」
「あの・・・もし僕に気を遣って喋ってくれてるのなら・・・」
 本当は今までみたいに、一人で静かに過ごしたいのかもしれない。そう思って言った僕の言葉をカカシさんが遮った。
「気なんか遣ってないよ。喋りたくなかったら向こうに座ってる」
「それならいいのですが・・・。僕、もっとカカシさんの事が知りたいからって、カカシさんの事も考えずに喋ってしまって」
 と、自分でそこまで言っておいて恥ずかしくなってしまった。大体、カカシさんの事が知りたいだなんて事を本人に向かって言うなんて失礼すぎるし。
 すると、僕の表情を見たカカシさんは可笑しそうに笑った。
「ほんと・・・テンゾウと話していると楽しいよ。俺も、もっと話したいと思ったから今日はこっちに座ったの。でも、そろそろ行かないと」
 時計を見れば、いつもカカシさんが店を出る時間が過ぎてしまっていた。
「わ。すみません、遅刻しちゃいますね」
「ん、大丈夫。ごちそうさま、今日もおいしかった」
「いつもありがとうございます」
 カカシさんはカウンターの上にぴったりの勘定を置いてから立ち上がり、店の出口の前で振返った。
「じゃあまた後でね」
「あ・・・お待ちしていますっ」
 今日はもう一度カカシさんに会えるんだ。嬉しくなってそう答えたら、カカシさんも笑って店を後にした。
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